バナナと仏壇 [食べ物・料理]
子供の頃、仏壇は宝箱のようだった。
重ね型仏壇で、引き出しや観音開きの扉が仏壇の下に付いていた。
引き出しの中には、貝殻に入った黒い軟膏が入ってたり
私を喜ばせるため、お菓子や祖母が数珠玉で作ったお手玉を
こっそり入れてくれていた。
その日も、祖母が何か宝物を隠してくれてるか
ワクワクしながら引出しをあけると
どう考えても食べ物ではなく、○んこにしか見えない物が
一本入っていた!
おばあちゃんが、こんな所に!と衝撃を受けた。
日頃、悪いことすると罰が当たるとか言ってたおばあちゃんが!
お行儀よくしなさいって言ってたおばぁちゃんが
大好きなおばあちゃんが・・・
家に帰ってきた祖母は、引き出しをあけ
「あれ?食べなかったの」と言うので
衝撃はとてつもなく広がり
誰にも内緒にしておこうと、幼い心に誓った。
「本当に食べなくていいの」という祖母の声も遠くに聞こえ
祖父と祖母は、私の具合が悪いのかと心配してくれてたが
泣きたい気持ちを堪えるのが精いっぱいだった。
顔をあげると、その物体を今まさに口に入れてる祖父が見え
私はとうとう泣き出した。
それが干しバナナだと知ったのは、泣きやんでからで
「食べてみるかい」の言葉に、首が捥げるほど横に振った。
知ってるバナナとはかけ離れてるし
衝撃はそう退いてくれなかった。
あれがバナナだなんて信じないだろうから
姉にも黙っていようと思った。
干しバナナが売っていた。一つ一つセロハンに包まれて。
記憶してた物より、ジャーキーやカリン糖みたいだったし、甘い匂いがした。
ちょっぴり泣きたくなるような
大笑いしたくなるような変な気持になった。